日本人の2人に1人は癌に罹患する現実。その内訳や、女性特有の癌の実態はどれくらい知られているでしょうか。特に見過ごされがちなのが「卵巣がん」です。毎年9月は世界的な「卵巣がん啓発月間」。この機会に、働き盛りの世代や閉経後の世代が知っておきたい「卵巣がん」との向き合い方、健康診断の実態や「性の医療格差」の問題について考えてみましょう。

婦人科検診は企業の健康診断で必須ではない

長寿時代になり労働人生の終わりは見えず、健康であり続けることは、現代に生きる私たちにとっての大きな課題です。企業の第一線で働く女性は年々増えていますが、忙しい日々の中でご自身の体と向き合う機会を持つことができていますか?

企業には、労働安全衛生法によって従業員の定期健康診断が義務付けられています。しかし、婦人科検診はオプションです。月単位・年単位でホルモンバランスの変化に左右される女性の検診が、本当にオプション扱いでいいものでしょうか。必須でなければ重要性が認識されにくく、検診費用が自己負担では避ける人もいることでしょう。女性特有の疾患を検知する貴重な機会が失われることは、軽視したままでいい問題とは言えないはずです。

「性の医療格差」は見過ごせない問題

「性の医療格差」という問題があります。医療の世界は長らく男性中心であり、医学研究や臨床試験は男性の体を基準とされてきたため、女性特有の症状の見落としや、女性患者の訴えを軽視する問題が指摘されています。東京大学大学院医学系研究科とカリフォルニア大学ロサンゼルス校の共同研究(※1)によると、女性医師が女性患者を担当した場合、男性医師よりも死亡率や再入院率が低いというデータが見られました。

ビジネス界も同様に、長らく男性中心に形成されています。意思決定層が男性であるために、婦人科検診の重要性が議題にすら上がらないのかもしれません。近年その点を問題視する企業は出てきており、従業員の婦人科検診費用を会社側が全額負担する、個人的に検診を受けに行く日を就業時間と認める、女性特有の悩みを相談する窓口を設けるといった取り組みが見られるようになりました。私たちウィルミナも婦人科検診の社内啓蒙に努めており、受診率は100%です。

※1:2024年「Annals of Internal Medicine」掲載 /Comparison of Hospital Mortality and Readmission Rates by Physician and Patient Sex

見落とされがちな卵巣がん、罹患する女性は年々増えている


国立研究開発法人国立がん研究センターの統計(※2)によると、日本人が一生のうちにがんと診断されるのは男性が61.1%、女性が50.1%で、2人に1人の確率です。2024年度の部位別死亡数(※3)を見ると、大腸、肺、膵臓が抜きん出ていますが、10位が卵巣がんであることに着目してください。相対的に数が少ないと油断するのは危険。2023年には全国で約13,000人の女性が新たに卵巣がんと診断され、2024年には約5,100人の方が亡くなっているのだそう。

※2,3:国立研究開発法人国立がん研究センター「最新がん統計」

卵巣がんは「サイレントキラー」と呼ばれています。素人が判断できる初期症状はほとんどなく、進行しても下腹がぽっこりする、下腹部に痛みがある、便秘やお腹の張りなど。自覚症状を訴えても誤診されるケースがあるため、定期的に検診を受けることが重要だと言われています。

卵巣がんに罹患する人の数は増加傾向。遺伝を含め要因はさまざまですが、現代的なライフスタイルも一因であると考えられています(※4)。初潮が早く閉経が遅い、あるいは出産経験がないか高齢出産のため、生涯の排卵回数は多くなっています。ストレス、欧米型の食生活や睡眠不足なども遠からずの要因に。現代女性ならばいずれも「身に覚えあり」ですよね。

※4:白金高輪海老根ウィメンズクリニック「子宮がん・卵巣がん」

「閉経=婦人科卒業」ではない!クリニックとの繋がりが早期発見のカギ

出産の機会がないと婦人科は縁遠く、次に接点を失う理由は「閉経」です。閉経と共に月経困難症がなくなると、婦人科にお世話になるという発想が抜け落ちてしまいがち。でも「閉経すれば女として終わり=婦人科も卒業」などと思うのは大間違い!卵巣がんをとって見ても、罹患者は40代を境に増えていき、罹患率のピークは50〜59歳(※5)。ちょうど閉経のタイミングと重なります。

※4:国立研究開発法人国立がん研究センター「がん種別統計情報 卵巣」


働く女性にとって、40〜50代は管理職や役員ポジションに就く時期でもあります。「いよいよ仕事に集中できる年齢になった」と言いたいところですが、ご自身の体に目を向けてるセルフチェックは怠らずに。定期検診を欠かさず受けるのはもちろんですが、少しでも違和感があれば婦人科へ出向くようにしましょう。日頃から、相談しやすい医師のいるクリニックを見つけておくことをおすすめします。

卵巣がんは、乳がんにおけるピンクリボンのような啓発運動は乏しく、いまだに早期発見を目指す上での十分な環境が整っているとは言えません。女性としての人生設計やキャリア形成の一環に、婦人科での定期検診を忘れずに組み込んでおきましょう。