自分の体とうまく付き合っていくために。ピルという選択。【プロレスラー・梅咲 遥さん】
概要
今回お話を伺ったのは、ワールド女子プロレス・ディアナに所属するプロレスラーの梅咲 遥さん。子どもの頃からプロレスが好きで、念願叶って2019年にプロデビュー。2023年4月には第17代W.W.Dシングルチャンピオンに輝きました。プロレスラーとして、女性として健康面で心がけていること、ピルの服用についてお話しいただきました。
生理をコントロールすることで、
試合への心構えができるように。
――梅咲さんがピルを飲み始めたきっかけは何だったのでしょうか?
私、高校生ぐらいまでは生理の周期がわりと安定していたんですよ。それがプロレスを始めてから、体を酷使するせいか、周期が乱れやすくなったんです。
ある時、不正出血をしたことがあったのですが、生理周期が乱れていると、それが生理なのか不正出血なのかわからないなと不安に思ったのがきっかけです。
――梅咲さんがプロレスラーになってからということは、そんなに昔の話ではないですよね。周囲の選手にもピルを服用している人がいらっしゃったとか?
私が飲み始めたのは2〜3年ぐらい前ですね。ディアナにも何人かいました。
――すでに経験のある人が身近にいると、検討しやすいかもしれないですね。ピルを飲んで、梅咲さんご自身に何か変化はありましたか?
周期が安定したというのがまず大きいですが、生理の量がグンと減って楽になりました。自分は生理痛がある方だという自覚はなかったのですが、ピルを飲んでいる期間は、痛みもやわらいでいることに気づきました。
写真:日下朋子
――プロレスラーというお仕事に良い影響はありましたか?
ありました!量が少ないだけで、そもそも練習や試合が楽です。あと、周期を管理できていると、大きな試合と重なることも事前にわかるから、心構えができます。
――女性アスリートにとって、生理は結果を左右する原因になるのでしょうか?
パフォーマンスに影響するかどうかは人それぞれだと思います。私の場合は、生理と試合が重なると、試合中はアドレナリンが出ていて乗り切れるのですが、終わった瞬間にドッと疲れが出ますね。体は熱くなっているのに、お腹だけ冷えていたりもします。
――逆に、ピルを服用することのデメリットというか困った点はありましたか?
毎日飲むものなので、忘れないように「寝る直前」と時間を決めていたのですが、何だかんだ忘れてしまうところ、です(笑)。
――やはりそこは課題になりますよね。今どきは飲み忘れ防止アプリなどもありますけど、飲む直前までは覚えていたのに、結局忘れてしまう…。
重い病気にかかっているわけではないのに病院へ行くのが面倒、というのもあります。「そこまでしなくていいかな?」と思うと、そこから通わなくなってしまったり。
――お仕事との兼ね合いで、病院で処方してもらう時間がなかなか捻出できないという難しさはありますよね。忙しい女性には、ぜひオンライン診療と処方を、時間を有効活用する選択肢の一つにしていただければと思います。
試合のために、よく食べ、よく寝る。
体はいつも温かく。
写真:日下朋子
――梅咲さんは、そもそもなぜプロレスラーになりたいと思ったのですか?
親がプロレスが好きで、ちっちゃい頃から会場で観戦していたんです。物心ついてからプロレスはずっと身近な存在でした。中学生ぐらいの時にはすっかりハマってしまい、ファンとして見に行くようなっていました。
――すごい、プロレスの英才教育!そして夢を叶えられたんですね。プロレスのどこに魅力を感じたのですか?
もともと、運動は、できるけど別に好きじゃなくて。
――意外ですね!
プロレスには、試合の勝ち負けではなく、華があるんです。人前に出る仕事がしたいと思っていたので、その夢が叶うのがプロレスでした。私にとって、お客さんの熱量や声援がすごく原動力になっています。
――ファンの方の応援があると違うものですか?
違います!アドレナリンが出るせいか、技をかけられ痛くても頑張れるんですよ。
――えーっ、あんなに痛そうなのに…。パフォーマンスに関わるとなると、やはり会場に来て応援していただきたいですね。
生で見るとプロレスを好きになってもらえると思います!今年の10月に後楽園ホールでディアナのビッグマッチがあるのですが、観客動員1000人を目指しているんです!
写真:日下朋子
――大きな試合に向けて、プロレスラーとして、健康面で気をつけていることはありますか?
すごく基本的なことですけど、十分な食事と睡眠を取ることが大切だと思っています。睡眠不足だと、技を食らった時に怪我をしやすくなるんです。あとは、代謝を良くすること、ですね。
――先ほど梅咲さんは、生理中はお腹が冷えやすいと仰っていましたもんね。
そうなんです。もともと、冷えやすいし汗もかきにくいタイプで…。それだと試合後の疲労回復が遅くなるので、代謝を高めて、巡りをよくするように心がけるようになりました。例えば、朝ごはんを食べる、とかシンプルなことなんですけど。
――よく食べ、よく寝る、巡りを良くする。ピルの選択もそうですが、アスリートにとっての基本姿勢が一般女性の健康づくりにも役立ちそうですね!
女性の選手がのびのびと、安心して活躍できるように。
ハラスメント対策に取り組むディアナ。
ワールド女子プロレス・ディアナは、2023年6月に、選手への名誉毀損ならびにハラスメント行為防止活動を開始する声明を発表しました。
これは、一部の観客によって、選手の体の特定部位を強調する撮影・編集が行われ、卑猥なコメントと共にネット上に投稿されている事案を危惧したもの。選手の人格権を侵害し、精神的苦痛を与えています。
ディアナは、度を超えた写真撮影や卑猥な投稿を確認した場合、民事裁判ならびに刑事告訴を起こすと表明しています。
プロレスは観客あっての興行であるため、こうした声を挙げる団体はありませんでした。そのため、ディアナが初めて断固たる姿勢を示したことが、賛否を巻き起こしました。その中には「露出している方が悪い」などという心ない声も見られます。
コスチュームは、それぞれの選手が、プロレスラーとしての動きやすさ、個性や華やかさを追求して選んだもの。性的に消費される謂れはありません。団体としては、選手が安心してのびのびと試合に挑める環境が守られるよう理解を求めています。
梅咲 遥
ワールド女子プロレス・ディアナに所属する女子プロレスラー。W.W.D認定シングル王者。必殺技はアメジストクロス、弓矢固め。アイドルグループ「シロツメクサ」のメンバーでもある。2023年10月8日(日)に後楽園ホール大会に出場予定。
Instagram @umesaki_haruka
X(旧Twitter)@haruka_umesaki
聞き手:藤島由希