生理はタブーではない。女性の課題解決のプロダクトを作り続ける、起業家の想い。

Be-A Japan、ウィルミナともに、女性の繊細な⾝体の課題に寄り添い、タブーとされてきた課題解決にむけたプログタクトの開発をしてきています。このように女性1人ひとりが自分らしく生きることに同じ思いを持つ両社。その共通の思いから、ウィルミナのフェムケアブラント・IbizaBeautyで、「超吸収型サニタリーショーツBé-A〈ベア〉」の取り扱いが2024年7月より始まりました。同ブランドの代表取締役CEO・髙橋くみさんは、子育てをしながら、日本とアメリカを行き来する経営者です。起業に至った経緯やプロダクト開発秘話、Be-A Japanの女性支援活動についてお話を伺いました。

日本の女性を幸せにするための製品づくり。

――企業ミッションに「(まずは)日本で一番女性を幸せにする」と掲げていらっしゃいます。

会社を立ち上げたのは、2009年で、30代前半のことでした。女性のライフステージに寄り添った製品やサービスを届けたいという思いで始めました。女性はライフステージの変化が大きく、そのつど心も体も変わることが求められます。日々、女性ホルモンに振り回されて、悩みが尽きないですよね。男性を排除すつもりではありません。ただ私たちは今、女性の抱える課題にフォーカスしたいので、ミッションも「まずは」としています。

――ウィルミナでも販売を開始した超吸収型サニタリーショーツBé-A〈ベア〉は、どういった想いから商品開発をされたのでしょうか。

私たちは女性ばかりの30名弱の会社です。メンバー間では、恋愛、結婚、妊娠、離婚のことまで、わりとオープンに会話する環境でした。ところがあるとき、生理のことはまったく話をしてこなかったことに気づいたんです。

きっかけは、オフィスのトイレでした。小さなオフィスですのでメンバーが持ち回りで掃除やゴミ捨てを行っていたのですが、申し訳ない、という気持ちからか、そもそも誰もトイレにゴミを捨てていなかったんですよ。女性ばかりの職場で、生理期間中のメンバーがまったくいないわけがないのに!

――仲間の誰かが捨ててくれるとなると、確かに申し訳ないなと思ってしまいそうです。ランチついでに外で替えるか、ゴミを持ち帰るかして…。

私は、日本とアメリカを行き来していてオフィスの滞在時間が限られていたので、気づけていなかったのですが、「みんなどうしているの!?」とちょっとショックを受けたんですね。女性のための製品を生み出す企業で、何でもオープンに話し合える空気だったにも関わらず、誰にでも毎月来る生理のことは触れられてこなかったんだなと。

――身近な違和感が、新しい事業のヒントになったということですね。

その後アメリカで吸水型のサニタリーショーツが出て話題になり、ショーツだけで過ごせて、手ぶらでトイレに行けて、ゴミも出ない。そんなものがあったら女性にとっての煩わしさがかなり解消されます。

ただ、アメリカの場合、タンポンの使用率も50%と高く、ピルの摂取率も高いため、吸水ショーツは他のアイテムと併用してバックアップのために穿くものだったので、吸水力とクオリティは決して満足できるものではありませんでした。タンポンの使用率が10%の日本で展開するなら、“漏れ”を気にする人は多いはずだから、そのまま輸入するのではなく、より吸水力のあるものを自分たちで開発しようということになりました。

――今でこそさまざまな吸水ショーツが日本市場にも出回っていますが、当時、Bé-A〈ベア〉の登場は革新的でした。

実は、一緒に作ってくださる工場を探すのに苦労したんです。20社ほどあたっても断られ続けました。理由はさまざまですが、ひとつは「穿くだけで1日過ごせるショーツなんて日本では売れないのではないか」という懸念。アメリカでは受け入れられるかもしれないけれど、日本の女性にはどうだろうか、と。その後ようやく請け負ってくださるところが見つかったのですが、初めからいいものを作りたいという私たちのこだわりが強すぎたことなど、さまざまな事情が重なり、頓挫してしまったんです。

――紆余曲折あり、ようやくショーツが完成した頃、発売に先駆けクラウドファンディングで賛同を募ったそうですね?

そうです。日本で吸水ショーツをゼロから商品開発するのはハードルが高く、発売まで約2年半かかりました。ようやく発売できる!というタイミングにクラウドファンディングを実施したのですが、結果1億円以上にもなるご支援が集まりました。私自身も、まさかここまでの反響をいただくとは思ってもいなかったので、想像を大きく上回るご支援をいただき、「こんなにも多くの女性が悩んでいたのか」「女性たちの期待に応えたい」という強い使命感を感じたのを今でも鮮明に覚えています。そして、ご支援金を元にジュニア用ショーツの開発もしました。製作をしてくださった企業の方々も日本の女性に、吸水ショーツがそこまでのニーズがあるとは思わなかったと驚いていらっしゃいました。

女性が何かを諦めることのない社会の実現を叶えたい。

――商品開発の苦労を経て形になった吸水ショーツですが、主にどういった点にこだわったのでしょうか。

ショーツ1枚で安心して過ごせる商品を目指していたので、やはり吸水性にはこだわり、尿もれ対策の製品技術を応用しました。。次に速乾性、そして漏れない設計ですね。普通のショーツは5工程ほどで作られているところを、Bé-A〈ベア〉は約40工程かけていて、ショーツ本体と吸収体が離れるセパレート設計は特許取得済みです。

――吸水力と速乾性があり、漏れにくい構造ということは、ニオイの心配もなさそうですね。ショーツは交換せずに一日穿くので、その点を気にする女性はいそうです。

ニオイは、蒸れによって雑菌が繁殖すると発生します。Bé-A〈ベア〉のショーツは、液体をしっかりと吸水するけど蒸気は排出するので、意外と蒸れにくいんですよ。ショーツと吸収体が一体型ではない構造も蒸れの軽減につながっています。

――髙橋さん自身の女性として生きてきたご経験がプロダクト設計に反映されているのですね。

21世紀の便利な時代になっても、女性たちがいまだにサニタリーライフで困っているなんていい加減どうにかしたい、快適に過ごせるようになってほしい、という思いが強くありました。

創業当初は30代でしたが、気づけばもう40代後半。今の課題は更年期ですが、生理周期がバラバラになってきて、「いつ来るか」とドキドキするんです。でも、吸水ショーツさえ穿いていれば安心して過ごせます。また、更年期といえば尿もれの問題も出てきますよね。

――なるほど!吸水性があるということは、大人の女性の尿もれ対策としても使えそうです。

尿もれは、生理よりさらにタブーなものとして女性同士でもオープンに語られません。ただ、40代以降はエストロゲン濃度の低下によって骨盤底筋がゆるみ、尿もれしやすくなるから、大勢の方が悩んでいらっしゃるはずなんです。それによって女性の行動が制限されたり、何かを諦めるといったことがない社会を、私たちのショーツで叶えたいと思っています。

Girls Be Ambitious!海も越えた女性活躍支援プロジェクト。

エチオピア視察

――女性を幸せにしようという企業ミッションを、製品に留まらずさまざまな活動で体現されていますよね。

コロナ禍には、医療従事者の方々にショーツを寄贈しました。大変な状況下で防護服まで着ていては、頻繁にトイレに行けませんよね。また、知的障がいがあり、サニタリー期間に自分自身でケアが難しい女子生徒のいる支援学級にも寄贈させていただきました。女子に限らず、男子中高生を対象とした生理セミナーも実施しています。

ブランドを立ち上げた当初は、テレビの地上波で生理の話題は扱えないとお断りされたこともあったんです。それがここ4年ぐらいで状況が変わり、テレビでも生理セミナーについて取り上げていただけるようになりました。以前だったらネットニュースに載ると批判的なコメントを投稿されていたのですが、いまでは男性・女性に関わらず肯定的なコメントの方が多くなりました。

――継続的かつ地道な活動の大切さが思い知らされます。そういった活動を「GBA(ジービーエー)」とネーミングされていますね。

「Boys Be Ambitious(少年よ、大志を抱け)」は有名ですが、中学校で習った当時、私は「なぜ少年だけ?Girlsは?」と疑問に思っていたんです。そういった気づきのきっかけにもなればと「Girls Be Ambitious」の頭文字をとって「GBA」を女性活躍支援のプロジェクト名にしました。

――エチオピアでもショーツ寄贈や生理セミナーなど、世界をフィールドに支援活動を行っていらっしゃるから、企業ミッションの「まずは」はもう不要かもしれません。

今年は、3月8日の国際女性デーに寄せてZIPAIRとのコラボレーションが実現し、「GBA」のロゴを付した特別塗装機の就航が開始し、いまも世界の空に羽ばたいています。

ZIPAIR特別塗装機(2024年9月まで運航)

――日本発のプロジェクトが世界に発信されているのは嬉しいですね!しかし、日本のジェンダーギャップ指数はいまだ先進7ヵ国中の最下位という状況です。アメリカにも拠点を置く髙橋さんの目には、いまの日本はどのように映っているのでしょうか。

ジェンダーギャップ指数の低下は大きな課題ではありますが、一方で日本の良さもあると思っているんですね。例えば、日本で生理休暇が法制化されたのは1947年のことで、おそらく世界初だったのではないでしょうか。取得率はわずか0.9%とはいえ、欧米の方に話すと、「生理の日に堂々と休めるなんて日本はすごいね」と驚かれます。

――子育て環境はいかがでしょうか。

ロサンゼルスの保育園はびっくりするほど高額ですし、学校へは親が必ず車で送っていかねばなりません。仕事をしながらの子育ては、時間もそうですが、コストがかかるどころかマイナスになることも。ただ、そこでキャリアを断たずに乗り切れば、仕事において性別で差別されることはほとんどありません。シビアではあるけれど、やりがいがあります。

――なるほど。日本の保育料は無償化が進んでいますし、子どもが一人で歩いて登校できる治安を考えると、実は女性にとって働きやすい条件は揃っているのかもしれません。

どちらが遅れている、進んでいるということではなく、それぞれに課題も良さもあるということだと思います。日本は、女性が活躍しやすいカルチャーが醸成されてくれば、いい方向へと向かっていくのではないでしょうか。

更年期に差しかかったいまだからできること。

本郷学園(豊島区駒込)でのセミナー

――髙橋さんは、ライフステージのさまざまな変化を乗り越えてここまで来られたと思うのですが、今後についてはどういった展望をお持ちでしょうか。

そうですね。出産後1年3ヶ月で起業してから15年、さまざまなこと経験してきました。いまほどポリコレが問われなかった頃は、男性であれば味わることのない苦労もあったと思います。ただ、女性としての悩みがあったからこそ商品化できましたし、自分たちがやる意味を見出せました。

Bé-A〈ベア〉が女性の活躍をサポートしていくという点に変わりはありません。さらに、今の私たちだからできることとして、更年期の課題をもっともっと知ってもらい、解決につながる製品やサービスを生み出していきたいですね。リテラシーを上げることによって選択肢が増え、悩みを解決する手立てが見つかると思っています。

――大人世代のための新しい製品が誕生しそうで、とても頼もしいです。次世代の若い女性たちに向けては、何かメッセージはありますか?

会に出てみないとわからないことってたくさんあると思うんです。私自身、学生の頃は、ここまで男女が不平等に扱われているとは想像もしていませんでした。ぜひ若いうちに、「どういう世界だったら自分たちが幸せでいられるだろう」ということをたくさん考えてみてください。その熱量が高ければ高いほど、人数が多ければ多いほど、社会を動かせますし、不平等な風習は打ち破れると思います。

――最後に、髙橋さんが個人として、自分らしく晴れやかに生きるために実践していきたいことを教えてください。

私は、いまとても幸せな立場にいるなと思っていて。商品に対してこれだけ喜んでいただけて、「不登校だった子が吸水ショーツのおかげで学校に行けるようになった」などのお声をいただけるもの売っているって、こんなに幸せなことはないですよね。いい商品を作ることによって、少しでも多くの方が幸せになって欲しい。そのためにできることを続けていきたいと思っています。

 

聞き手:藤島由希

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