女性医師が解説!なぜ匂うの?色素沈着は加齢のせい?デリケートゾーンにまつわるウソ・ホント。

デリケートゾーンについての悩みがあるとき、相談できる相手はいますか?センシティブな領域だからこそ、友人にすら打ち明けるのが恥ずかしかったり、「こんなことで病院を利用してはいけない」と受診をためらったりしている女性はきっと少なくないはずです。

今回は、“膣育”の提唱者で、女性特有の悩みと真摯に向き合う産婦人科医・宮本亜希子先生をご取材しました。自分だけ匂いがキツいのではないか、色素沈着が進んでいるのではないか…といった、デリケートゾーンに関するよくある悩みについて、専門医の観点から解説していただきます。

宮本亜希子先生
産婦人科医であり、婦人科美容の領域でも活躍。性教育やHPVワクチンの普及、女性の生活の質向上にも力を注いでいる。銀座のクリニック「BIANCA(ビアンカ)」では膣ヒアルロン酸や婦人科形成手術を担当。

デリケートゾーンの痒みや匂い、どう対処する?

――産婦人科医である宮本先生のもとには、デリケートゾーンについて課題を持つ女性がよく訪れるのではないでしょうか。

私の印象では、デリケートゾーンのちょっとした違和感が理由でわざわざ婦人科に来院するのは、美容・健康意識の高い限られた少数派。多くの方が、定期検診のついでに「そういえばこんな悩みがあって…」と打ち明けるか、医師から指摘されて初めて自覚するという方も少なくありません。

――症状に無自覚だったり、我慢しているという方もいそうです。

あるいは「こんなものだろう」「どうしようもないこと」とあきらめている感じですね。ご高齢の女性だと、婦人科検診の際に、手で触れるだけで出血しそうなほど膣が萎縮していて検査もままならないといったケースもあります。痛くないですかと医師に聞かれ、そこでようやく「そういえば痛いです」と口にされるといった具合です。私は、デリケートゾーンについてオープンに語れない日本の風潮のせいでもあると思っています。

――早く専門家に相談していればいろいろと打つ手があったのに…というケースは少なくなさそうですね。では、さっそくよくある悩みを相談させてください!デリケートゾーンが徐々に色素沈着しているような気がするのですが、歳をとったせいでしょうか?

デリケートゾーンのよくある誤解のひとつですね。メラニンには個人差がありますが、女性器や乳首、脇などが黒ずんでくる一番の理由は女性ホルモンです。初潮を迎えてから、出産可能年齢になり成熟するにつれて女性ホルモンの分泌量が増え、デリケートゾーンの色が濃くなっていきます。特に妊娠中はエストロゲンが増えるので乳首が黒くなりがち。

そして、閉経を境に女性ホルモンが減少すると薄くなっていくはずです。温泉なんかで、おばあちゃんたちの乳首を見かけると薄いピンク色だったりしますよね。

――そういえば記憶にあるような…。では、色素沈着はそのうち軽減していくと思っていていいんですね。

そうです。だから私、本音では女性たちに「黒ずみなんて気にするな」と言ってあげたいぐらい。ただ、痒みを伴うようなら、乾燥によってうるおいが不足しているせいで色素沈着して見える可能性があります。もしくは下着で締めつきすぎて擦れているという場合も。そうなると軽い炎症を起こしている状態なので、病院で見てもらうか、下着を見直したり保湿ケアを始めたりした方がいいでしょう。

――デリケートゾーンの痒みは婦人科へ相談に行ってもいいレベルのものですか?

もちろんです。自覚するほどの痒みがあるならまず病院へ行きましょう。よく「こんなことで病院に来てはダメだと思っていました」と言う方がいらっしゃるのですが、病院で「疾病がない」と確認するのはとても大切なこと。それがわかった上でセルフケアを行えばいいですよね。

――それでは、匂いについても同様ですね?

女性器が強烈に匂う場合は、性病か子宮頸がんの可能性があるので、ためらわずに婦人科を受診してください。生理の経血やおりものには多少の匂いがありますが、それも更年期以後は女性ホルモンの減少でなくなっていくはず。それなのに異様な匂いがあるのは病気のサインだと考えましょう。

更年期以降のデリケートゾーンは乾燥しがち!

――更年期についてちょうど話題が出ましたが、40代からデリケートゾーンの乾燥が酷くなってきたという話もよく聞きます。これは加齢の影響でしょうか。

更年期を迎えて女性ホルモンが減少すると、膣内のうるおいが失われ、乾燥しやすくなります。そうすると何が起こるのかというと、デーデルライン桿菌という常在菌が膣内に住みにくくなってしまうんです。デーデルライン桿菌は乳酸菌で、膣内のpH(ペーハー)を弱酸性に保ち、雑菌から守ってくれています。善玉菌の腸内フローラがおなかの調子を整えてくれているのと同じイメージです。

このデーデルライン桿菌が減少すると、膣内がアルカリ性に傾き、雑菌などの影響で炎症を起こしやすくなります。痒みや痛みを伴うようになるでしょう。

――乾燥しているということは、適切なケアとしては「保湿」になりますか?

女性器の外側であれば、乾燥対策として、市販の保湿アイテムでセルフケアができるでしょう。膣内のうるおいということなら、婦人科美容の施術にヒアルロン酸を注入するものがあります。自由診療ではありますが、緩んだ膣が引き締まり、うるおいによって柔らかく肉厚な状態になるので、乾燥や痒み、性交痛や尿漏れの軽減にも繋がります。50代、60代にも、ご自身の快適さへの投資として行う方がいらっしゃいますよ。

――デリケートゾーンに痒みがあるとしっかり洗った方がいいのかなと思うのですが、婦人科医の立場からのアドバイスはありますか?

痒みや匂いを気にして膣内までしっかり洗う方がたびたびいらっしゃるのですが、洗いすぎは禁物。膣内の健康のために必要な常在菌までを退治し、自浄作用を失ってしまうことになります。デリケートゾーンの洗浄に適したアイテムで、女性器なら外側だけを清潔に保つよう意識してください。近年フェムテックの盛り上がりによって、選べる市販のアイテムも増えていますよね。

――Ibiza Beautyが40代以上の女性を対象に行った「フェムケア実態調査」では、デリケートゾーンのセルフケア経験者が3割程度に留まるという結果でした。誰にも言えない悩みを抱えたままでいるのではなく、適切なケアを行なっていただきたいと思います。宮本先生、ありがとうございました!

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