年齢を重ねると脳裏にチラついてくる「加齢臭」という言葉。もしかして私、臭ってる…?
一度気になってしまうと、押し寄せる不安の波に飲まれ、居ても立ってもいられません。加齢と体臭、一体どのような関係があるのでしょうか。医師に取材し、加齢臭の原因や日常的に実践できる対策方法を伺いました。

また今回、ウィルミナでは「女性の加齢臭」についてのアンケート調査※を実施。体のどこが臭うのか、どんな場面で気になるのかなど、40代以上の女性の悩みを掘り下げて加齢臭クライシスに立ち向かいます!

米田麻美先生
日本産科婦人科学会専門医/日本アロマセラピー学会認定医/日本性感染症学会認定医/日本スポーツ協会公認メディカル・コンディショニング資格認定医/日本パラスポーツ協会公認パラスポーツ医。女性ヘルスケアアドバイザーや「センダイガールズプロレスリング」サポートドクターも務める。

40代以上の女性の約7割が加齢臭を気にしている。

他人には相談しにくいセンシティブな臭い問題。同世代の事情が気になりますよね。

アンケート調査で、ニオイ対策を行っている40代以上の女性を対象に「ご自身の体臭・加齢臭が気になったことはありますか?」と尋ねたところ、どの世代でも約7割が「はい」と回答。パブリックには語り合わないのに、大多数の女性が加齢臭に悩んでいるという実態が見えてきます。

何とも悩ましい加齢臭ですが、気になるのは自分の体だけではないはず。そう、お隣にいるパートナー!男性特有のツンとくる臭いが、年齢と共に増していると感じたことはありませんか? アンケートで「加齢臭の男女比」についても質問したところ、女性たちは「男性のほうが強い」という認識でした。しかし40代に限っては、4割近くが「男女差はない」と回答しています。もしかすると、自分自身の加齢臭が気になりはじめる年頃だから…?パートナーの体臭が鼻につく上に自分の臭いについても不安が募る、40代のリアル。

加齢臭はどこから!?脇、頭皮、そしてデリケートゾーン。

臭いが気になる箇所についての回答でもっとも多かったのは「脇」でした。もともとワキガなど体臭が発生しやすいゾーンに加齢臭も加わるせいで、いっそう強く感じられるのかもしれません。そして「頭皮」「デリケートゾーン」と続き、「耳の裏」や「首筋」という声もあがっています。 加齢臭が気になるタイミングとしては「暑い日・汗をかいたとき」の回答が多数。日本の夏は猛暑日が増加傾向にあるため、同時に、体臭に悩まされる日も増すことが懸念されます。シーン別には「人に会うとき」、電車やエレベーターなど至近距離で接する「密室」の不安が目立ったことから、加齢臭のケアは、大人にとって欠かせないマナーと言えそうです。 そこでケアの話になりますが、加齢臭の悩みを抱えているみなさんはどのように対策しているのでしょうか?1位「制汗剤の使用」、2位「汗拭きシートの使用」とボディケア関連のアイテム活用例が続き、加齢臭が付着した衣類には消臭効果のある洗剤で対処している人も多く見られます。

しかし、こうして結果のグラフを見ても加齢臭の対処法はさまざまで、何をどこまでやるべきなのか?正解がわかりません。ということで医師に相談!産科婦人科の米田麻美先生にお話を伺いましょう。

加齢臭は更年期とリンク。暮らしの中で無理なく対策を!

加齢臭に漠然とした不安感を抱いてしまいますが、そもそも何が原因で発生するものなのでしょうか。

「日本女性の閉経年齢は45〜55歳が平均ですが、更年期を迎えると自律神経が乱れてホットフラッシュが起こり、汗をかきやすくなります。実は、排出されたばかりの汗はほぼ無臭の水分です。それが皮脂と混ざり合い、皮膚常在菌が分解されて臭いが発生。さらに汗で湿った衣服の細菌も加わり、不快な臭いになります」(米田先生)

若い頃も汗をかきますが、それとはまた質が異なるのでしょうか?年齢と共にベタッとした汗になってきた気がします。

「年齢を重ねると、皮脂量の増加に伴い、皮脂腺の中の脂肪酸類であるパルミトレイン酸も増えます。このパルミトレイン酸が過酸化脂質と結合して分解・酸化されると、加齢臭のもとであるノネナールが発生。頭部や首の後ろ、胸もと、脇の下などが特に発生源となる部分です。

また、精神的・肉体的に疲労やストレスがたまると、肝機能低下によりアンモニアが解毒されず体内に蓄積されます。そうすると血液中のアンモニアが上昇し、汗や呼気から放出される『疲労臭』に。疲労といえば乳酸が原因物質ですが、汗に含まれる乳酸が皮膚常在菌によって分解されるとジアセチルが発生し、皮脂腺から分泌される中鎖脂肪酸と混ざると不快な臭いになります。これが俗に言う『ミドル臭』です」(米田先生)

年齢と共にデリケートゾーンの臭いも強くなっている気がするのですが、これも加齢臭ですか?

「更年期のホルモン変化によって萎縮性腟炎を起こし、膣内のバランスを取ってくれる乳酸などの常在菌が減り、デリケートゾーンに雑菌が繁殖しやすくなります。そこに尿漏れも加わり、臭いがキツく感じられるようになってしまいます。加齢臭と原因物質は別ですが、ある意味、これも加齢による悩みですよね」(米田先生)

ノネナールの加齢臭に留まらず、疲労臭にミドル臭…。臭い問題、逃げ場なし!加齢によって体力が低下するのに仕事や家事の手間が減ることはなく、疲労を溜めやすい状態だから、臭い問題を根本から解決するのは難しい!?何か良い対策法はないのでしょうか。

「加齢臭の大きな要因は汗なので、シャワーや入浴で余分な皮脂や汗を洗い流して体を清潔に保ち、出先では汗をかいたら汗拭きシートでこまめに拭き取りましょう。ホットフラッシュ対策としては、脱ぎ着によって体温を調整しやすく通気性の良い服装を心がけたり、冷たいタオルで首元を冷やしたり、アロマオイルを取り入れたりしてもいいですね。天然精油成分の殺菌・抗菌の薬理作用を活かして体臭を『中和消臭』できます。柑橘系のリモネンがおすすめですよ。ノネナールはストレスで増加するので、ラベンダーオイルで気持ちをリラックスさせるのもいいでしょう。

体の内側からの対策としては、抗酸化作用を持つ食品に着目しましょう。意識的に摂取したいのは、レバー・しそ・にんじん・卵・かぼちゃなどのビタミンA、パプリカ・ブロッコリー・キウイ・セロリ・長芋などのビタミンC、ごま・アーモンド・かぼちゃ・玉ねぎなどのビタミンE。また、動物性脂質の脂肪分は過酸化脂質を増やして加齢臭の原因になるため、牛肉や豚肉、バター、揚げ物を控えることをおすすめします。年齢と共に『脂っこい食べ物が苦手』と思うようになるのは、体からのサインなのかもしれませんね」(米田先生)

睡眠や食習慣の見直しにパートナーも巻き込んでいく。

自分自身の加齢臭対策は日常に取り入れられそうですが、パートナーの体臭も気になります。やはり男性の方が臭いが強くなるのでしょうか。

「男性ホルモンの働きで女性より皮脂量が多く、枕からツンと臭うあの『ミドル臭』も男性の方が強い傾向があります。ただ、女性も加齢により男性ホルモンの働きが活発化します。ノネナールと皮脂の過剰分泌によって引き起こされる生理現象は、男女を問わず、年齢を重ねれば誰にでも起こり得ること。パートナーといえども体臭のことをストレートに指摘するのは憚られますから、それとなく食生活の見直しを促したり、寝具をまめに取り替えるといった工夫をしていきたいですね。

軽い運動で血流を良くすると血液中の乳酸濃度を下げるので、一緒にウォーキングを始めてみるのもいいでしょう。また、質のいい十分な睡眠も大切です。睡眠中は過酸化脂質の生成を促す活性酸素が除去されます」(米田先生)

40代以降は、仕事に加えて、子どもの進学や介護など家庭の問題でも手一杯になりやすく、時間的にも心身面でも余裕を失ってしまいます。ストレスもまた加齢臭の原因になるのだとしたら、もはや加齢臭なんか気にしない!「臭いが気になったときにケアをすればいいや」と軽く構えておくぐらいが得策かもしれません。

食事、睡眠、運動のバランスを図りながら、規則正しい生活を送る。そしてストレスを溜め込まないように適度にリフレッシュしながら、無理のない範囲でやっていきましょう。

更年期障害に関する参考:日本産科婦人科学会公式サイト

※女性のニオイに関する意識調査
調査実施時期:2025年5月1日(木)〜5月9日(金)
調査方法:インターネットアンケート/ウィルミナ調べ(クロス・マーケティングQiQUMOを利用した調査)
調査対象:全国の40代以上の女性400名(有効回答数)