ウィルミナが応援する女性トライアスリートのインタビューシリーズ、第4弾。今回ご登場いただくのは、国内外の大会で活躍し、将来が期待されている平柳美月さんです。高い目標に向かって突き進む姿勢と、ポジティブオーラを持つ平柳さんには、応援するファンがたくさん!平柳さん流のマインドセットや挫折したときの乗り越え方などを伺いました。

平柳美月さん
企業にてフルタイム勤務をしながら、トライアスリートとして活躍中。数々の国内大会で優勝し、
2023年のIRONMAN世界選手権KONAではエイジトップ7のリザルトという好成績を収める。
毎日の食事やトレーニングの様子をInstagramでも発信中。

自信を失いかけたときに始めたフルマラソンから、トライアスロンへ。

――平柳さんは子どもの頃からスポーツ少女だったそうですね。

はい、小学校3年生から男子に混じって野球をしていました。そのときの監督が、結果よりも頑張ったこと自体を褒めてくれる方で、「努力は必ず報われる」「練習は嘘をつかない」ということを教えてくれたんです。そのおかげで頑張ること自体が好きになり、中学から高校まではソフトボールに打ち込みました。

高校はインターハイで優勝するほどの強豪校で、かつ学問にも厳しい学校でしたから、練習と勉強に明け暮れ1ミリも怠ける暇のない毎日を過ごしていました。当時の私は、そうして努力が実を結んでいくことに楽しさを覚えていました。

ただ、日本代表に選出されるような選手と一緒に練習していたので、圧倒的な差を感じるようになっていったんです。ソフトボールという競技を続けていく上で必要な「センス」や「運」など、自分の努力の範疇を超えた要素に苦しむようになり、大学進学を機に引退。スポーツから離れた代わりに学生活動(大学生協学生委員会)に励み、忙しい日々を送っていました。

ソフトボール時代の平柳さん

 

――スポーツ選手として、10代で厳しい挫折を経験されたんですね。そこからトライアスロンを始めるまでにどのような心境の変化があったのでしょうか。

社会人になって仕事だけをするようになると、私にとって初めてと言っていいぐらい、明確な「休日」という存在が現れました。最初は楽でよかったのですが、段々と怠けている自分が嫌になってきてしまったんです。体重は増えていくし、ネガティブな気持ちが募っていくし、「自分はこのままでいいの?」「もっと頑張れるのでは?」と、唐突にフルマラソンを走ることにしました。

――ブランクからいきなりのフルマラソン!大きな挑戦ですね。

気が変わる前にすぐ走れる大会を探し、2か月後に開催される河川敷での小さな大会を見つけたので、練習も不十分なままとりあえずエントリー。初めての大会では半分以上を歩いてしまい、タイムも5時間以上かかり、いま思えば無謀な挑戦でした(笑)。ただ、ゴールできた達成感は素晴らしいものでした。自分で目標を決めて、そこに向けて準備し、達成する。「私がやりたいのはこれなんだ!」と感覚を取り戻し、「これを続けていきたい!」「そうだ、毎月フルマラソンを走ろう!」と決意。そこからは月に1回、42km走るということを約3年間続けました。

そのうちに「次はトライアスロンをやってみたい」と思い立ったのですが、知識も道具もなく、何を準備すればいいのかすらわからない状態。会う人会う人に「私トライアスロンやりたいんです!」と言い続けているうちにやっとトライアスリートの方と出会い、『トライアスロンショップtetto』へ繋いでいただきました。そこで自転車のブレーキのかけ方や海での泳ぎ方、大会の参加方法などをゼロから教えていただき、トライアスロンを始めることができました。

――トライアスロンにどのような魅力を感じていますか?

トライアスロンは、センスや経験値よりも、圧倒的に練習量が必要な競技。まったくの初心者から始めた私でも戦える余地があることや、練習すればするほど成長できるところが魅力です。スイム、バイク、ランの3種目トータルで速くなるためには練習時間や方法にも工夫が必要で、どれかがうまくいくとどれかがうまくいかなくなったり、一筋縄ではいかないところも面白いですね。こんな大人になってもできないことがいっぱいあって、まだ成長できるし、もっと上を目指せるというのは素晴らしいこと。「できない、悔しい!」「できた、嬉しい!」と成長の過程を楽しむ毎日は、小学生の頃に戻ったような気持ちです。

バイクを始めた頃(左)と最近のフォーム(右)

トライアスリートに学ぶ目標の立て方、モチベーション維持。

――平日はフルタイムでお勤めしながら、トライアスリートとしての実績も着々と積んでいらっしゃいますが、どのように目標を立てて実践しているのでしょうか。平柳さん流の達成志向を学ばせて欲しいです!

現在はコーチと相談しながら、大まかな長期計画と詳細な週間計画を立てています。私にとっての長期計画の指標はレースですが、そこに向かって「バイク強化期」「ボリューム期」「高強度期」「ランボリューム期」など、月ごとにざっくりとやることを決めます。そして週間計画は、仕事の予定を見ながら練習メニューを詳細に決めて実行し、週明けにできたかどうかを振り返るようにしています。

スポーツに限らず、これから何か新しいことを始めたいなら、スキルの向上や数字の結果を目標にするよりも、「実行する」ことそのものを目標にするのが前向きに取り組みやすいかなと思います。私の場合はそれが「毎月フルマラソン」でした。

――実行する手前で、気持ちが向かなかったり怠けたくなってしまいそうですが、そんなときはどう乗り越えればいいでしょうか。

私が意識しているのは「目的を見失わない」ということ。くじけそうになったときは、当初の目的に立ち返り、「自分は何のために走りはじめたのか?」「この時を迎えるためにどれだけ準備してきたのか?」と思い出すと、最後までしっかりと頑張れます。私の場合、一人ではどうしても怠けてしまうので、目標や計画をSNSで公言するようにしているんです。そうすれば逃げ道はなくなりますよね(笑)。それに、「応援してくれている人たちに良い報告がしたい。恩返しがしたい」という想いが苦しいときに弱い自分の背中を押してくれます。

――高い目標に向かっていく過程で、モチベーションを維持し続ける秘訣はありますか?

目標が高いかどうかではなく、自分が純粋に「やってみたい!」「挑戦してみたい!」とワクワクしているかどうかが大切だと思います。「フルマラソンを完走してみたい」と思った8年前と、「トライアスロンの世界選手権で表彰台に立ちたい」と思っている今とでは、自分の中の軸はまったく変わっていません。

自分が何のために一生懸命練習しているのか、どんなゴールを迎えたいのか?それを見失わないために、日頃から目に付く場所に関連するものを置くようにしています。今はトイレの扉に、2023年のIRONMAN世界選手権KONAの結果を掲示しています。エイジトップ7で、表彰台の5位まであと一歩届かず悔しかった大会。スマホのロック画面も、ゴール後に悔し泣きしている自分の画像にしているんです。それを見ると今でも胸が苦しくなり、「一生懸命練習した自分に、もう二度とこんな顔をさせたくない」と思うと、日々の選択が良い方に向くようになっていきました。

スマホのロック画面

 

――Instagramを拝見していると、過酷な練習やレース中でも平柳さんは楽しそうにキラキラと輝いていらっしゃいますよね。どうすればそのようなヘルシーな美しさをキープできるのでしょう?

自分の心身とよく向き合い、決めた目標に向けて努力を重ねることで、自分自身に自信を持てるようになり、以前よりも内面から輝けるようになったように感じています。目標に向かって身体を動かして汗をかくことで、身体も整えることができ、食事や睡眠に対する意識も自然と高まります。私にとってはこれが何よりの美容法です。

トライアスロンでは、どんなに練習したとしても、レース本番でメカトラブルがあったり、何らかのアクシデントが起こるんですね。回数を重ねていくと、その場その場でしっかり受け止めて、なんとか工夫できるようになってきました。そうするうちに、日常生活や仕事でもあんまりミスに動じなくなったような気がします。 落ち込むよりもすぐに「次どうしようか?」と前を向けるようになったことも、自分自身に良い作用を及ぼしているかもしれません。

――女性として、トライアスリートとして、将来どういった自分でありたいとイメージしていますか?先々の目標や目指すステージをお聞かせください。

直近の目標は、IRONMAN世界選手権の年代別(30-34)の表彰台です。この年代は結果的にエイジグループ総合上位に入らないと表彰台には上がれません。そしてこの目標をクリアできたら、いよいよプロの世界にチャレンジしたいと考えています。

将来的なビジョンとしては、若い世代に対して「挑戦に年齢は関係ないのよ」と言えるおばあちゃんになること。自分がワクワクする目標を見つけ、そこに向かって努力を続けていく。スポーツじゃなくてもいいのですが、そのときの自分よりもちょっと上の、頑張って成長しないとできないようなものを追いかけていたい。その挑戦に年齢は関係ないよ、ということを伝えていきたいです。

――平柳さんのこれからの挑戦を、ウィルミナも応援していきます!ありがとうございました!