ウィルミナが商品の寄付をしてご縁ができた「認定NPO法人全国こども食堂支援センター・むすびえ」。ウィルミナとこども食堂の橋渡しをしてくださったのは、むすびえのプロジェクトリーダーである落井麻紀さんでした。落井さんは、子育てをしながらIT企業に勤めた経験もあるパワフルなママさん。こども食堂に関わる仕事に転職した理由は何だったのでしょうか?落井さんのユニークなキャリアと、パーソナルな魅力に迫ります。

落井麻紀さん
「認定NPO法人全国こども食堂支援センター・むすびえ」プロジェクトリーダー。大手IT企業、スタートアップ企業を経て、むすびえに転職。全国のこども食堂や支援団体と企業を繋ぎ、プログラムやイベント等を企画、運営する。3人のお子さんのお母さんでもある。

認定NPO法人全国こども食堂支援センター・むすびえ
https://musubie.org/

転職の動機は「子どもたち世代に苦労を残したくない」。

――落井さんのキャリア形成やお仕事への姿勢が、同じく子育てをしながら働いている女性のヒントになるのではと思いますので、ぜひお話を聞かせてください。もともとはIT系の大手ベンチャー企業にお勤めだったそうですね。

振り返って自己分析をすると、以前から社会を良くすることを仕事にしたいと意識していました。私が就職活動をしていた当時はちょうど“ITバブル”といわれいた時代で、人と人とを繋ぐインターネットに可能性を感じたんです。ユーザー1人1人の小さな善意を集めれば、何か大きな社会貢献ができるかもしれない、と。

――確かに、インターネットによって声を拾いやすくなったり届きやすくなったりしますね。社会活動の幅が広がります。

もっと遡ると、自分の興味・関心は10代から一貫していたなと思います。生徒会でアジアの学校建設の募金活動をしたり、大学では国際協力、国際行政を学び、海外からの留学生を支援するサークル活動もしていました。

しかしいざ社会に出てみると、女性として、親として、海外よりもっと身近なところで壁を感じるような社会課題がたくさんあり、自分自身もその当事者であることを肌身に感じました。そうした点と点が線に繋がったのが、むすびえへの転職のタイミングだったのかもしれません。

――落井さんはお子さんが3人いらっしゃるとのこと。そんな中で、ITベンチャーで働くというのはさぞや大変だったのではと想像してしまいます。さらに転職活動までやってのけたという!

20代、30代を大きな組織で過ごし、3人の子どもを授かり、育休と復職を経て葛藤しながらも仕事を続けていました。育休や時短など制度には恵まれていましたが、仕事では100%打ち込めない後ろめたさや遅れへの焦り、家庭では子どもたちへのしわ寄せへの罪悪感、うまくバランスをとれない自分への苛立ちなど、共働きのシビアさを体感していた頃です。

私は生まれ故郷から遠くに住んでいたため、2人目が産まれた後義実家を頼って近くに移り住み、夫の両親のサポートを得ることはできましたけど、それでも毎日がギリギリの状態でした。都市部では特に共働き世帯が孤立しがちですよね。

――まさに、こども食堂の必要性を感じます。日本の核家族化が叫ばれて久しいですが、呼応するようにこども食堂が増えていきました。

そうなんです。ごくごく普通の家庭なのに、なんでこんなに毎日大変なんだろう、世の中にどれだけの苦労が人知れず蔓延しているんだろうと疑問を感じていました。子どもが大きくなり大変な時期が落ち着いた頃、私たち世代が味わった苦労を、子どもたち世代に残したくないという思いが自分の中に生まれていたことに気づき、転職の動機になりました。40歳になったのをひとつの節目として、今後の自分の労働リソースを自分が必要だと思う社会を良くする方向へ使っていこう、と。そんな時に出会ったのが、こども食堂とむすびえでした。

――40代は、女性がこれまでの生き方を振り返って変化を起こすタイミングかもしれませんね。

労働人生のちょうど折り返し地点だなと思ったんです。60歳過ぎまで働くことを考えると、残りの人生、このままでいいのかな?って。若い頃は営利企業で鍛えられて幅広く経験を積むことができましたし、それは実際にいまのむすびえでの業務にも役立っています。でも40歳を過ぎた自分が働く意義を見出すとすれば、人生のテーマと働くテーマが重なることに力を注ぐことが、これからの自己実現だと気づきました。

――若い頃に社会活動を志していた原点に立ち返ったんですね。いくつになっても変化を恐れず、夢を諦めることなく前進する姿勢がとてもステキです!

画像提供:認定NPO法人全国こども食堂支援センター・むすびえ

こども食堂は、地域に開かれたコミュニティ。

――私たちウィルミナは、むすびえとの出会いによって、こども食堂がどんなものかを学ばせていただきました。地域の子どもたちに食事を提供するだけではなく、地域コミュニティの活性化も担っていますよね。

こども食堂は今や中学校の数を超えて、全国で1万2千か所以上あり、幅広い方々に開かれた多世代交流の地域の居場所となっています。子ども達や単身高齢者の孤食、居場所がなくて孤立してしまう若者など、地域にはさまざまな課題がありますが、みんなでごはんを食べる機会があると、知り合いが増え、身近に安心できる居場所がひとつ増えますよね。週末に共働きの両親とお子さんがランチに来て、子ども同士はもちろん保護者同士の交流の場にもなっています。

――そんな利用の仕方もありなんですね!平日の疲労が溜まっていて、平日の夜や週末に食事作りをする気力もない…というママたちにとってもありがたい存在で。

そういえば、子どもの保育園時代はたまにママ友たちとお迎え後に近くの公民館の部屋を借りて、ファミレスのお弁当ワイワイと食べながら、子どもたちは自由に遊ばせて、ママたちは育児や生活のことをおしゃべりしたり、子どもの成長を報告したりしていました。忙しい中でも月1回でも集まって話すと「明日からまた頑張ろう!」って充電できましたし、子どもたちも保育園後の特別感が楽しそうで、遊び疲れて夜の寝かしつけも楽でした。

その頃は、まだこども食堂というものを知らなかったので、近くにあればよかったなぁと今でも思います。自分が子育てする立場になってみると、個人主義の加速でそういった地域の交流は自分が育った時代より難しくなった印象がありました。

画像提供:認定NPO法人全国こども食堂支援センター・むすびえ

――こども食堂の必要性が増していますね。こども食堂を、独身やディンクスの方々が利用するのはありですか?

はい、もちろんです*。大人向けには300~500円ほどの価格で食事を提供するこども食堂が多いです。その食事代は次回の食材購入に当てられますから、実はこども食堂に参加していただくこと自体がこども食堂の応援になるんです。むすびえが調査(「こども食堂の実態・困りごと調査2025」)したところ、全国のこども食堂の7割ぐらいが「どなたでもどうぞ」と開かれた活動になっています。

*参加条件を設けているこども食堂もございます。

――それを聞いて安心しました。ボランティアをしたい気持ちはあれど時間や体力が許さないという人たちも、立ち寄るだけで支援になるのであれば。しかも食事を数百円でいただけるのなら、メリットしかないです。

そうやって通ううちに、地域に知り合いが増え、運営ボランティアになってくださる方も結構いらっしゃいますよ。こども食堂の困りごとが目に入って、「実はそれ、私の専門分野です」とお手伝いを買って出てくださったり。

ご高齢の利用者さんがボランティアに回ることもよくあって、子どもたちの「ごちそうさま!」や「美味しかった、ありがとう」と言われるのが嬉しくて毎回来てるの、というお話もよく聞きますね。地域にそういった自分が必要とされる居場所があり、地域の方同士で交流が深まると、災害時に孤立せず助け合いにつながることが注目されています。

画像提供:認定NPO法人全国こども食堂支援センター・むすびえ

――いまどきは、都市部だとお隣の顔も名前も知らないというケースは珍しくないですが、確かにいざというとき、ご近所に助け合える人がいるのはとても心強いです。時間があるときにお住まいの地域にこども食堂を探して、顔を出してみるといいかもしれませんね。

ところで落井さん個人としては、今後のキャリア形成はどのようにイメージされていますか?

いま、こども食堂は全国に雨後の筍のように増えている状況です。むすびえとしてしっかりと調査をし、自治体や地域の中間支援団体のみなさんと連携して、各地域でこども食堂を支える循環が生まれるようなネットワークを築いていきたいと思っています。

私個人としては、将来、自分が感じた社会課題解決と持続可能性が両立するような事業を自分で起こしてみたいという気持ちもありますが、今のむすびえではありがたいことに、バイタリティ溢れる魅力的なこども食堂運営者、こども食堂の支援者の方々との出会いがたくさんあり、都度、自分のなりたい将来像が更新されていくのが楽しみでもあります!

――ウィルミナとしてこれからも、むすびえはもちろん、落井さん個人の応援もさせてください。今回は貴重なお話をありがとうございました!