女性の社会的地位の向上、ジェンダー平等の実現を目指して設立された「女性リーダー支援基金 ~一粒の麦~」。ウィルミナ代表・幸村潮菜がイベントに登壇したことをきっかけにご縁が結ばれました。今回は、「女性リーダー支援基金 ~一粒の麦~」の審査員・小木曽麻里さんを幸村が訪ね、日本女性を取り巻く環境や、次世代リーダーの育成について対談形式で語り合います。

小木曾麻里(こぎそまり)さん(写真:右)
東京大学経済学部卒、日本長期信用銀行に勤める。タフツ大学で修士課程を修了後、世界銀行に入行し、
世界銀行グループ多国間投資保証機関(MIGA)東京代表に。2017年には笹川財団でジェンダーレンズ投資ファンドを設立。
ダルバーグジャパン、ファーストリテイリンググループを経て、2021年SDG インパクトジャパンの代表取締役に就任。
「女性リーダー支援基金 ~一粒の麦~」(パブリックリソース財団)の審査委員を務める。

女性の社会的地位向上を目指した、次世代リーダーの育成。


幸村
「女性リーダー支援基金 ~ 一粒の麦 ~」は、もとは石川清子さんという個人の女性の発案で立ち上がった基金だそうですね。現在は錚々たるメンバーが審査員を務めていらっしゃって、小木曽さんもそのお一人。

小木曽
発起人の石川さんが、女性の社会的地位向上につなげていくための支援に活かしたいということで、個人の資産から作られた基金です。初期からいらっしゃるのは審査委員長の上野千鶴子さんや、ジャーナリストの浜田敬子さんなど素晴らしい方々ばかりで、私は2023年度から関わらせていただいています。2024年度からは、石川さんの意思を引き継いだ支援者による民間基金になっています。

幸村
奨励金への応募者は毎年100名を超えると伺っていますが、みなさん、どういった志を持つ女性たちなのでしょうか。

小木曽
次世代の女性を支援したいという石川さんの思いから始まったので、若い方が中心ではあっても、年代はさまざまです。特徴としては、起業家に留まらず、社会活動家や政治家志望が多い点かもしれません。審査員のみなさんには専門領域があり、それぞれの観点で見ていらっしゃると思いますが、私は起業・ファイナンス面で、例えばファンドレイジングの可能性などを掘り下げるようにしています。ご本人には強い信念があったとしても、彼女を取り巻く環境はどうなんだろう?応援してくれる人はたくさんいるのだろうか?といった持続性も見ます。現状が厳しいようであれば「また来年応募してくださいね」と声をかけることもあります。

幸村
多彩な審査員のみなさんからそういったフィードバックをいただけるのは、若い世代にとっては貴重な機会ですね。

小木曽
審査員のみなさんはとても熱が入っていて、最終協議は議論が活発になり一日がかり。候補者との面談もお一人ずつじっくり行います。でも私は、最終的には、ご本人の生い立ちやこれまでの歩みといったストーリーに惹かれてしまうんですね。応募用紙に訥々と書かれている想いを読み込んで、すっかり感情移入をしてしまって。そうすると「誰も落としたくない」となってしまうのですが(笑)。

幸村
毎年公募があって、審査を経て合格者が決まったら、年間を通して支援していらっしゃいますよね。

小木曽
支援対象は毎年6名前後で、1人あたり100万円の活動資金を支給するのですが、奨励金受給後の3年間は活動状況を報告してもらうことが条件。100万円は大きな額ではないかもしれませんが、どちらかというと、資金よりネットワークの方が重要なんです。女性の起業家、特に社会活動家や政治を志す女性は孤立しがち。カウンターパートが男性ばかりで、継続的な取り引きや資金調達が難しくなり、断念せざるを得ないといったケースがよくあるんです。そこで、審査員も垣根を超えて、勉強会や交流ミーティングといった奨励金外のサポートをしています。また、一期生が先輩のような立ち位置で存在してくれていることによって、年々ネットワークも広がっています。

日本の意思決定の場になぜ女性の参画が必要なのか?



幸村
カウンターパートが男性ばかりというお話がありましたが、私も過去に、何度か直面してきました。弊社も今でこそ管理職の男女比が半々ですが、私が経営に入った4年前はすべて男性だったんです。同じ組織でも、意思決定者の基準が変わると、ここまで変化するものかと実感しています。

小木曽
日本はどこもまだ同じような構造ですね。意識改革を促している企業も出てきていますが、日本のジェンダーギャップは根深いと感じています。残念ながら既得権益を享受している側は、本当の意味でマイノリティの課題に気づきにくいのだと思います。これを変えていくためには、意思決定の場に女性やマイノリティの声を増やしていくしかないですよね。

幸村
上からアサインされる機会を待つしかなくて、女性の側もわきまえてしまっていますよね。「当然、男性から順に選ばれるものだ」って。

小木曽
当基金は社会活動家の支援に力を入れていますが、世界的に見ても、社会課題のある現場には女性が多いんです。教育や介護、医療、貧困の現場にしても、影響を受けやすいのが女性です。だから社会課題を解決する事業には女性の視点があった方がいいですよね、ということになるんです。

幸村
女性に関わる事業なり社会活動であれば、女性リーダーだからこそ気づくこと、できることがたくさんありますよね。

小木曽
そうなんです。女性起業家の支援については最近政府も積極的に行なっていますが、女性の課題に取り組む社会起業家や女性の政治家への支援はまだまだ手薄です。せっかく声を上げてくれた優秀な女性の活動が途絶えてしまわないように、私たちのような存在が支援して、ネットワーキングの中に組み込んでいき、みなでサポートしていくことが重要です。

日本女性は自信がない?自己評価は2割、3割増しでいい!


幸村
これまでさまざまな現場を見てきた小木曽さんは、なぜ日本から女性リーダーが輩出されにくいとお考えですか?

小木曽
ジェンダーの課題はもちろん日本に限ったことではなく、例えば日本より進歩的に見えるアメリカですらまだまだです。ただ日本の状況はそこからさらに周回遅れ。これには日本特有の根強い社会規範やジェンダーのバイアスが存在します。家父長的なマインドがまだ残っており、女性が上司になることへの心理的なハードルもあるのかもしれません。

幸村
そのカルチャーを変えるなら、やはり組織のトップに女性リーダーが必要という話に帰着しますね。トップが変われば、女性が活躍し続ける環境も整えやすくなるはず。出産で一回退職すると、正社員で社会復帰するのは大変だったりしますし、生涯年収でも大きく差が出てしまいます。意思決定層に女性がいれば、例えば、シッターの利用料を会社が補助してでも女性に働き続けてもらおう、という発想が出てくると思うんです。

小木曽
私、ある企業の方から「シッター制度を設けたのに社員が誰も使わない」という声を聞いたことがあるんです。そうだとしたら、トップがみずから「シッター制度を使うように」と社内で声高に呼びかけるべきでしょう。女性には、シッターを利用する後ろめたさが少なからずあると思います。そこで会社から強い呼びかけがあれば、「会社の指示なら仕方ない」と心理的ハードルが下がるし、周囲の反応も変わります。

幸村
私は35歳で出産し、仕事を続けてきたのですが、保育園は朝早くから夜は一番遅くまで預かってもらい、送り迎えや夕食の支度までシッターさんに頼りきりでした。「自分でちゃんと世話しなくては」「母親だから我慢してやらなくては」という意見もあると思いますが、利用経験のある私からすると、シッターさんの方が子育てのプロなんですよ。息子も、子育ての素人の私に世話されるよりも、シッターさんの方がはるかに快適そうでした。ごはんも美味しいって(笑)。

小木曽
特に日本の女性は、我慢してしまいますから。我慢するのが当たり前だと。でもそれって本当に女性たちがそう思っているのでしょうか。周囲の影響による刷り込みだったりしないでしょうか?女性は男性に比べて自信がないという、インポスター症候群の影響もあるかもしれません。

幸村
どんなに活躍していても、自分に自信が持てないという女性は多いです。同じ業務を任せようとしても、男性は「やります、できます」と即答するところ、女性は「私には難しいかもしれません」と慎重な姿勢で。

小木曽
インポスター症候群は、自分に自信がないため、自分の実力を過小評価してしまう傾向があります。ですので、女性は自分に下駄を履かせて評価するくらいがちょうどいい。私は部下の女性たちには、昇進や転職活動の際には自分の評価を20%増しにして交渉しましょう、と言っています。

幸村
女性は交渉を好みませんよね。自分の成果を低く見積もってしまい、アピールも苦手。

小木曽
交渉ごともそうですが、もし何か疑問を抱いたら、「おかしいんじゃないか?」と声をあげられるようにもなってほしいですね。自分の中の疑問やフラストレーションを言葉にしてみるだけでいいんです。私は朝ドラの『虎に翼』のとらちゃんの、「はて?」が大好きでした。気づきに蓋をし、社会に合わせにいくのではなく、「はて?」と問いを追求していきましょう。

幸村
その問いも、自分がそれなりのポジションについていれば、実現できるようになります。謙虚さを脇に置いて、機会が平等にあるならみずから取りにいく。そうするとまた見える世界が変わってくると思います。もし失敗したら、やめてしまって大丈夫。そのときに相談できる女性リーダーの先輩方が身近にいてくれると、大きくチャレンジできますね。

小木曽
そうです。女性リーダー支援基金は、「何が正しいのか」「何がどうあるべきなのか」という問いと信念を持ち続けられる次世代リーダーを、これからもサポートしていきます。

幸村
ウィルミナもさまざまな形で応援させてください!小木曽さん、今日はありがとうございました。

撮影:土佐麻里子

女性リーダー支援基金 ~一粒の麦~
公益財団法人パブリックリソース財団が運営する、女性リーダーの育成を目的とした支援基金。日本における女性の意思決定過程への参画と社会的地位の向上を図るため、2021年に設立され、現在に至る。今後の活躍が期待される個人を公募し、審査委員会の審議を経て対象者を選定し、活動奨励金を支給する。現在、2025年度の公募を実施中。

2025年度公募期間:7月14日(月)~8月29日(金)17時締切
応募サイト:https://www.public.or.jp/post/support-women-leaders_koubo2025

女性リーダー支援基金は皆様からのご寄付によって運営されています。寄付金は勉強会をはじめとした基金運営やイベント開催、サポート費用に充てられています。あたたかいご支援を心よりお待ちしております。

寄付サイト:https://syncable.biz/associate/supportwomenleaders
※当基金へのご寄付はすべて寄付金控除等の税制優遇の対象となります。